91話
「お母さん蒸発して、お父さん病気で、
アニキひとりに任せるわけにいかないじゃん!」
ううーーーーーん…
ユイ…
アニキひとりに任せっきりじゃん…
ヒロシにしてみれば、
「お母さん蒸発して、お父さん病気で、妹はグレて家にも帰ってこない」
だよ?
でも、グチひとつこぼさず頑張ってるじゃん…
18歳の身につらい状況だとは思うけど、
なんだかね、厳しいこと言うと、ユイは全部いいわけしてるように思えるんだよね。
お膳立てされたアイドルへの道にうまく乗れなかったから、もう手遅れと思ってる。
さらに、自分で道を作っていくのは最初から無理と思ってる。
ぜーんぶ、お父さんのせいでお母さんのせいで、運命のせいにしてる。
自信がないんだろうな…
めざしてる夢への野望とか、プレッシャーに弱いとことか、東京への想いとか、
鈴鹿さんじゃないけど、ユイは昔の自分に重なるところがあって
(私はあんな美人じゃないしアイドルめざしてたわけじゃないですが)
ずっと応援してきたけど、もう、いいかげんにしなよって思ってしまう。
なんでアキに対してあんなに攻撃的なのかわからないし。
八つ当たりで負け惜しみなのかなあ。
今のユイのほうが100倍ダサいと思うんだが。
「お母さん、帰ってこないよ」
なんて言ってしまうアキにも驚いたけど、
「お母さん、帰ってくるよ」っていう、
ユイの幼い言い方にすごくせつなくなった。
ユイ、春子がいてよかったね。
根っこの部分、ちゃんと見せられる大人がいて。
「傷つけちゃった」って泣ける場所があることに、ちょっと安心。